Q1. 不動産広告は誰が売主なのか分かりにくいけれど、表示方法に決まりがあるの?
不動産の広告を見ると2社以上の会社が広告主になっていたり、媒介と表示されていたりして誰が売主なのか分かりにくいのですが?
A1:広告の責任などを明確にするため、広告主の名称が表示されます。建売住宅や分譲マンションなどの販売広告では、複数の業者が共同の広告主になることがあります。
また、売主から販売を任された業者だけが広告主となる場合は、売主の商号と免許証番号も表示されます。広告主の取引態様が売主(貸主)なのか、代理なのかまたは 媒介(仲介)なのかが表示されます。
売主または代理の場合は、広告主が購入者と直接売買契約を結ぶことができますが 、媒介の場合は、買主と売主とを引き合わせて契約成立のお手伝いをするだけですから、直接買主と契約できません。
Q.2 物件所在地は一般の住居表示と違うけれど、どうして?
不動産物件の所在地は一般の住居表示と違いますが、どうして?
A2:不動産の所在地の表し方には、登記地番と住居表示があります。
地番は1筆の土地ごとにつけられています。
広告や売買契約書に記載されるのは登記地番です。
その不動産の所有者が誰かあるいは抵当権があるかどうかなどは登記簿を見なければ分からないからです。
Q.3 広告にある「駅から徒歩○分」は実際に計ったの?
よく募集の広告等に「駅から徒歩○分」と書いてますが、この「○分」は実際に歩いて計ったのですか? また、1分の基準は何ですか?
A3:不動産広告では、徒歩時間として道路距離80mを1分として計算し、1分未満の端数は切り上げて表示されます(850m÷80=10.625→11分)。したがって、信号待ちや坂道などは考慮されていません。
また、電車やバスの所要時間は運行ダイヤによる時間が表示されますが、待ち時間 や乗り換え時間は表示されません(待ち時間等が含まれない旨は明記されます)。
鉄道会社が公表する新設予定駅は、その整備予定時期(その時期が変更されることがある場合はその旨)を明らかにして表示されますが、新駅からの電車の予想所要時間は表示できません。
Q.4 媒介契約すると自分で買主を見付けられないの?
土地建物の売却のため、宅建業者と「専任媒介契約」を結びましたところ、1ヵ月後、親戚の者が売ってほしいといってきましたので、媒介契約を解除しました。ところが後日、その宅建業者から仲介料の請求がありましたが、払わなくてはいけないのでしょうか?
A4:まず、媒介契約について説明しますと、宅建業者が宅地建物の売買などの仲介の依頼を受けると依頼者との間に書面(媒介契約書)を作成し、交付しなければなりません。
「専任媒介契約」というのは媒介契約の1つです。依頼者が他の宅建業者に重ねて媒介や代理の依頼を禁止する契約で、これによって業者間の「抜け駆け」を防ごうというものです。
その他、他の業者に依頼できる「一般媒介契約」や、自己発見取引も禁止する「専属専任媒介契約」などがありますから、媒介契約をするときはきちんと確認する必要があります。
ですから、この場合、「専任媒介契約」は自己発見取引を禁止するものではありませんので、仲介手数料を支払う必要はありません。
ただし、建設省が定めた約款を使用して専任媒介契約をした場合は、履行に要した費用を支払わなければならないとされています。
Q.5 モデルルームのチェックポイントは?
立地条件の良いマンションの購入を考えています。その物件は現在建築中で、モデルルームは見に行ったのですが、どのような点に注意すればよろしいですか?
A5:建売住宅や分譲マンションは工事の完了前に販売されるものが多いのですが、これを青田売りといいます。青田売りの場合には建築確認番号、工事の概要、工事の完了予定年月などが表示されます。
業者が売り主の場合、代金の5%(完成済みの場合は10%)か1000万円を超える手付金等を受領するときは、手付金等の保全措置をして保証会社や銀行など、建設省が指定した保証機関が発行する保証書等を交付することになっていますから、必ず受け取るようにして下さい。
Q.6 土地だけ購入したいけれど、建築条件付きではだめなの?
まず、土地を購入し、将来家を建てたいと考えています。
建築条件付きの土地というものがありますが、とりあえず土地だけでも購入できますか?
A6:宅建業者が土地を販売するに当たり、一定期間(3ヵ月)内に建物を建築することを条件とする「建築条件付き土地」というものがあります。このような場合、土地のみの販売はされません。契約形態は、土地については売買契約、建物については建築請負契約となります。土地の売買契約後、3ヵ月以内に建物の建築請負契約が成立しない場合は、土地の売買契約は白紙となり、支払い済みの金銭は全額返還されます。
また、広告によって建物のプラン例(間取図)を大きく掲載するなど、新築の建売住宅の広告のように見えるものもありますので注意して下さい。
Q.7 家を建てられないセットバックって?
セットバックを要する物件ということで、将来家を建て替える時にその部分には建てられないとのこと。どうして?
A7:敷地は幅員4m以上の道路に接していなければならないのが原則ですが、例外として4m未満であっても良い場合があります。このような道路は、建築基準法42条2項に規定されていることから、「2項道路」とか「みなし道路」といわれています。この場合、原則として道路の中心線から2m後退(セットバック)した線が道路と敷地の境界線とみなされます。
セットバック部分は、道路として取り扱われますから、建て替えなどの際にはその部分は、建ぺい率や容積率の基礎数値から除外されます。
不動産広告では、セットバックを要する場合はその旨を表示し、セットバック部分の面積が概ね10%以上になる場合は、その面積まで表示することにしています。
Q.8 抵当権付き物件、契約して大丈夫?
ある仲介業者から中古住宅の紹介を受け、買おうと思っています。ところが、融資を依頼していた銀行から、この物件には抵当権がついている、との連絡がありました。このまま契約して大丈夫でしょうか?
A8:抵当権が実行されますと、その物件の所有権を失うことになります。ですから、この場合、売主に「抵当権の抹消登記」を請求し、それと引き換えに代金の支払いをすればよいわけです。抵当権を消滅させてから契約するか、契約時において一切の権利の付着していない所有権の移転を、売主に保証させる必要があります。
このような権利関係を事前に知る方法として、登記簿を取り寄せてみるのも1つの方法です。登記簿には表題部、甲区、乙区という欄があって、それぞれの物件の所有地や持ち主が記載されています。抵当権等については乙区に記載されています。契約時にこうした権利関係を説明するのは、業者の義務とされていますから、信用ある業者であればきちんと説明してくれると思います。
Q.9 不動産の売買にもクーリングオフがあるの?
ある宅建業者から別荘地案内旅行の招待を受けました。現地案内所は招待客の熱気に包まれており、セールスマンから言われるままに手付金と内金を払い、その後登記も完了しました。旅行から帰って10日後、とても代金を工面できないし、何とか 解除できないでしょうか?
A9:登記がされているということで相手が履行に着手しているので、手付解除はできません。原則論からいえば通常契約をした以上、後になって意思をひっくり返すことは許されません。契約の意味がなくなるからです。 ただ、この原則論をいつも貫くと消費者に酷な場合もありますので、宅建業法には「クーリング・オフ」という制度が設けられています。つまり、頭を冷やすという意味です。旅行先といった、特殊な状況下で契約をした場合など、一定の要件を満たしている場合に限り、買主側に無条件で解除を認めようというものです。 その要件とは、
第1に、業者が自ら売主の場合。
第2に、業者の事務所など以外の場所でした契約。
第3に、契約の履行関係が終了していないこと。
第4に、クーリング・オフの意思を伝えるのは必ず書面によること。
第5に、クーリング・オフについて記載した書面をもらい、その説明を受けた日、すなわち告知があった日から数えて8日を経過していないことです。
このケースでは、契約してから10日経っていますが、告知を受けていませんし、代金全額払ってなく、物件の引き渡しも受けていませんので、履行の終了とはいえません。したがって、クーリング・オフが認められることになります。
Q10 土地を購入したが、家を建てられないとのこと、どうして?
一戸建てを持ちたいと思い、現地を見に行き気に入ったので、さっそく売主業者 と契約しましたが、「市街化調整区域」で一般住宅は建てられないと分かりました。 契約を解除したいのですが?
A10: 「市街化調整区域」とは、都市計画法によって「市街化を抑制すべき区域」と指定された区域です。ここには、原則として一般住宅は建てられないことになっています。
宅建業法では、宅建業者は取引の相手方に、ある一定の重要事項について、事前に説明しなければならないことになっています。重要事項の説明は宅地建物取引主任者という資格者が取引主任者証を提示し、「重要事項説明書」という書面を交付して行わなければなりません。 この時「ここは市街化調整区域で、一般住宅は建てることができない」旨の説明がなく、土地を買ってしまったという場合には、契約を解除することができると考えられます。
Q.11 不動産の売買契約を締結したが、解除はできないの?
念願のマイホームを手に入れるため、土地の売買契約を済ませ、手付金200万 円を支払いました。ところが、その直後友人から好条件の土地を紹介され、この契約 を解除したいと考えています。この場合、手付金はどうなるのでしょうか?
A11: 通常、契約は守ってもらわなくてはいけませんが、この場合、手付を放棄すれば解約できます。手付というのは契約を結ぶ時、当事者の一方から相手方に交付される金銭をいいます。
一般に不動産取引の場合には、それがどんな名目の手付であれ解約手付としての性質を持っています。
買主の方が解約したい時はこの手付金を放棄し、売主の方が解約したい時は手付金を返して、プラス同額の金銭を支払えば、契約を解除できるというものなのです。いわゆる「手付流し、倍返し」と呼ばれるものです。
ただし、額があまり高すぎると事実上解約手付としての目的を果たせないので、売買代金の1割ぐらいが一般的です。宅建業者自らが売主となって手付を受け取る場合は、2割を超えてはいけません。「手付流し、倍返し」は、相手方が契約内容の実行に取りかかる前までにしなければなりません。
Q.12 ローンがおりなかったら売買契約はどうなるの?
3500万円の中古住宅を買うことになり契約を済ませました。3000万円は ローンで支払う予定でしたが、実際は2800万円しか借りられず、200万円を工面できません。この場合、契約を解除できますか。 また、すでに手付金として払った お金は戻ってくるのでしょうか?
A12:不動産を買う時に一番気になるのは、やはり資金繰りでしょう。現在では、全額自己資金でという方は少ないと思います。宅建業者は買主がローンを利用することを知っている場合には、事前に「ローン特約」について説明しなければならないことになっています。簡単にいえば、ローンが組めなかった時にどうするかの取り決めです。
福岡県宅建協会の会員店で通常使用されている契約書には、ローン特約条項として、「買主の責めに帰すことのできない事由により融資の全部、または一部について承認が得られないときには買主はこの契約を無条件で解除することができる」とあります。ですから、契約をされる場合には、この特約条項があるかないかを確認することが必要です。
この特約がなければ融資不承認になっても、契約を解除することも、手付金を返してもらうこともできなくなり、さらには、代金支払債務の不履行となって契約を解除され損害賠償請求をされることもあります。
Q1. アパートを押さえるため払った金銭は戻らないの?
アパートを借りるため何軒かの不動産業者を訪ねました。 ある店の物件が気に入りましたので、その旨を告げたところ「この物件は人気物件だから急がないと他の借り手がすぐ決まってしまう。 物件を押さえるためには家賃の1か月分を差し入れてくれ」と言われました。そこであまり考えずに言われるとおりにしましたが、後でよく考えると日当たりが悪く広さのわりに案外割高だと感じましたので、次の日に「借りるのは止めたので支払った金銭を返して欲しい」と言いましたら、業者は「既に家主に連絡の上、契約を了解してもらっており契約は成立している。 金銭は手付金であるので返還できない」と言われました。こんなことってあるのでしょうか?
A1:ご質問のケースでは、物件が気に入ったものの、確定的に借りたいと言ったわけではないし、業者自身も手付金ではなく物件を押さえる目的で受け取っていますので、民法でいうところの契約の申し込みがあったと見るのは難しいと思います。
また、家主も相談者の家賃支払い能力や保証人について何も調べていない段階で承諾したと言うのはかなり無理があるのではないでしょうか。ですから契約が成立しているとは考えにくいと思います。
家主としては手付金を収受する権利はありませんし、業者も家主に今回の金銭を渡すべきでなかったと考えられます。
また、仮に業者が主張しているように「賃貸借契約」が成立しているとすると、業者は重要事項の説明をしておらず、また同説明書を交付していないことになり、宅地建物取引業法違反を問われるおそれがあります。 以上のことを念頭において、もう一度業者と話し合って見て下さい。
Q2. 家賃を滞納している借家人との賃貸契約書は解約できるの?
この不況で失業し、家賃の支払いが1ヵ月以上滞っている借家人がいます。 賃貸借契約書中には、借家人が1ヵ月以上賃料の支払いを怠ったときは、家主は何等の通知催促を要せず賃貸借契約を解除することができるとの条項があります。 この契約条項を楯に日頃も態度の悪いこの借家人との賃貸借契約を解約したいと思いますが、問題はないでしょうか?
A2:借家人に今回のケースのように家賃不払いがある場合において、家主が賃貸借契約の解除を実行するには、
1. 借家人に軽微とはいえない家賃の不払いがあること。
2. 家主が相当の期間を定めて家賃の支払いを求める催告をしていること。
3. 借家人がその催告期間内に家賃の支払いをしていないこと。
4. 家主が契約解除の意思表示をすること、などの条件が必要です。
1. の家賃不払いの程度としては、賃貸借契約の基礎をなす借家人と家主の信頼関係を破壊する程度と考えられ、判例等見てみますと最低3ヵ月は必要なようです。 2. の催告の期間としては1週間程度は必要だと思われます。 以上のことから、残念ながらご質問の1ヵ月程度の家賃不払いでは、家賃支払い義務違反としては軽微であり、借家人と家主の信頼関係の破壊とまでは言い難く、契約解除は認められないでしょう。 また、契約書中の無催促解除条項についても、あまりに家主側にとって有利な特約と解され、悪くすれば公序良俗に反する契約内容ととられるかもしれません。 粘り強く督促されることをお勧めします。それでも借家人に反省がなければ、そのことが解約の理由となるでしょう。
Q.3 衛星放送のアンテナ、マンションのバルコニーに設置できないの?
衛星放送を受信するため、バルコニーの手すりにパラボラアンテナを設置しています。すると先日管理組合の方がみえて「共同アンテナを設置するので、個人のアンテナは撤去して下さい」と一方的に私に通告してきました。 私のパラボラアンテナは通常より小さい方でネジだけで留めており穴などはあけておりません。また、共同受信よりも個別受信の方が画像が鮮明と聞いておりますので取り外したくないのです。 私の要求はバルコニーの通常の用法として許される範囲ではないかと思いますがいかがでしょうか?
A3:衛星放送の普及に伴い今回のような問い合わせ、トラブルが増えているようです。マンションのバルコニーは本来共用部分なのですが、通常は居住するスペースの専有部分と一体となっており、建物部分の所有者等に専用使用権が認められています。
こういったことから、居住者がバルコニーに様々なものを置いたり、設置することにより、管理組合とトラブルになるようです。そこで問題となるのが今回のパラボラアンテナの設置がバルコニーの使用方法で、通常の用法の範囲内といえるかどうかということです。
実はこの件に関しては判例が有り、要約すると次のように判示しています。
1. 共同パラボラアンテナが設置されれば、設置日以降衛星放送の受信が可能となること。
2. バルコニーは共用部分であり設置者はただ専用使用を許されているに過ぎないこと。
3.テレビ受信向上委員会発行「マンションでの衛星放送受信の手引き」にもアンテナの設置には「管理者の承諾が必要」と明記されていること、などから共同アンテナが設置されて以後は「バルコニーとしての通常の用法」とは言えなくなる。
以上のことから、ご質問の要望は難しいでしょう。
Q.4 家主に無断で組織変更することは「無断譲渡」になるの?
永年個人経営でクリーニング店を営んできましたが、税金対策上の問題もあり会社組織に変更しました。会社組織といっても社長は借家人である私で、専務は私の配偶者、息子が課長という形だけの株式会社なのです。 しかし、以前から私に立ち退きを迫っている家主は、無断で個人から会社へ借家権を譲渡したのだから賃貸借契約の解除事由が発生しており、即刻契約を解除するので出ていってくれと言います。 家主に無断で組織替えを行ったのはちょっとまずかったかなと思いますが、実質はなにも変わっていないのです。 それでも私のしたことは家主の言うように無断譲渡になり、解約理由となるのでしょうか?
A4:法律は借主が建物の借家権を譲渡したり、転貸したりする場合は、事前に家主の承諾が必要とされ、これに違反した場合は家主は賃貸借契約を解約して借主を立ち退かせることができると規定しています。そこで今回の個人で借りた店を法人組織にして営業する場合、会社への借家権の譲渡や転貸になるかということですが、先ほどの規定をストレートに解釈すると、当然ながら個人と法人では人格が違い、従来個人で店舗を営業していたものを会社組織に変えて営業すれば、借家権を別人格たる会社に譲渡した又は転貸したととられかねません。
しかし、今回の場合のようにその会社組織なるものが、全く形式的なもので、実態は従来通り借家人個人の営業と変わりないという場合、家主に対する背信行為がないので、家主側に契約解除権は発生しないとする判例が多数あります。ですから、家主の言い分は若干無理があるようです。いずれにしても何か契約事由に変更があれば、家主に断ってからのほうがよいでしょう。
Q.5 借家人が部屋を無断で改造、賃貸借契約を解約できないの?
実は借家人が家主である私に無断で借家の「和室」を「洋室」に改造してしまったのです。洋室にするとフローリングによる階下への騒音問題も気になりますし、家主である私に一言の断りもなく、このような改造工事を勝手に行った借家人に対しての怒りがおさまりません。このうえは、信頼関係の破壊ということで賃貸借契約を解約したいのですが、賃貸借契約書の中に今回のような「無断改造」の禁止規定を入れてなかったのです。契約条項にないので解約は難しいでしょうか?
A5: 一般的に賃貸借契約を解約できる内容としては、次のようなことが考えられます。
1. 家賃の滞納、不払い、
2. 賃借権の無断譲渡、転貸、
3. 無断増改築、
4. 使用目的の無断変更、
5. 共同生活の保全に反する行為の繰り返し、などです。
今回の場合は、3.の無断増改築にあたり、契約の解除はできることになります。ただ、契約書中にこの条文がないとのことですが、民法では賃貸借契約においてその使用目的を特約で特定した場合はもちろん、特約がなくても借家の構造、周囲の環境等から使用目的が定まる場合には、そのことに従って借家を使用しなければならない「用法遵守義務」があるのと同時に、使用目的に照らして一般的に要求される注意を持って借家を保管しなければならない「善管保管義務」が借家人に対して課されており、このことに違反した場合は契約解除は可能と考えられます。
しかし、できるだけ先ほど列記したような契約解除条項は賃貸借契約書中に定めておいたほうが入居者にとってもわかりやすく、なんといってもトラブルの未然防止に繋がると考えて間違いないと思います。
Q.6 借家を円満に明け渡してもらうには?
来春、私の長男が結婚します。そこで現在賃貸している借家を明け渡してもらいたいのですが、入居しているのは先代からの借家人で、そこの息子と私は同級生で幼なじみでもあります。このような事情もあり、なるべく円満に明け渡しをお願いしたいのですが、何かよい方法はないでしょうか?
A6:個人間の争いはなるべく避け、円満に解決したいと思うのは人情であり当然のことと思います。ましてや相手方が幼なじみということでは、なおさらだと思います。 しかし、当事者だけで冷静に話し合うことはなかなかできないことですし、仮に話し合いがまとまったとしても、そのことが実行されなければ何にもなりません。
そこでこのような問題を解決するために「調停制度」というものがあります。これは、普通の裁判のように対立する当事者の間で主張の正否を決めて解決するのではなく、お互いの意見を話し合いにより調整し、解決を図ろうとするものです。 具体的には知識や経験豊富な第三者、一般的には裁判官である調停主任と調停委員2名以上で構成された調停委員会で、当事者を斡旋して条理にかない実状に即した解決を図ろうとする制度です。
当事者だけの話し合いでは、どうしても感情的になって自分の意見を冷静に相手方に伝えることができなかったり、相手方が冷静に聞いてくれなかったりして紛糾することがありますが、そのようなときは、調停委員会が間を取り持ち問題を整理して話を進めてくれます。
また、訴訟では申し立てた側の意見が正しいかどうかの判断だけですが、調停は相互の意見を出し合いある点では譲歩し、またある点では譲歩を求めるなどして解決内容を自由に決めることができます。 調停の申し立ては相手方の住所地を管轄する簡易裁判所となっておりますので、詳しくはそちらでお尋ね下さい。
Q.7 立退料について教えて?
事情があり、どうしても借家を明け渡してもらいたいのですが、先日借家人の転居先も見つかり、立退料の額について合意に達すれば立ち退いてもよいと言ってくれています。 そこで質問ですが、立退料の算出について合理的な手法があれば教えて下さい。
A7: それと旧借地借家法と考え方の違いがあれば教えて下さい。
平成4年8月1日施行された新しい借地借家法において、明け渡しを求める際の正当事由の判断について、立退料の申し出も考慮することが明文化されました。
正当事由が不足すると思われる場合、立退料の提供をしたり不足分をカバーするという今までの慣行を明文化しただけで、新たに立退料を容認する制度ができたわけではありません。ですから新旧で実質的な変更はありません。次に借家の立退料の算定をする場合の手法ですが、次のような費用が考慮されます。
1. 移転費用 引っ越し費用、設備などの移設費用、移転通知費用などです。
2. 造作買い取り費用 借家人が家主の承諾を得て行った建具などの造作を引き取る費用です。
3. 借家権価格 借家権の経済的利益を算出し、土地や建物価格に一定割合の借家権割合を乗じて算出します。
4. 営業補償金 借家人が何か商売をしていた場合、移転することに伴い生じる損失の補償です。
立退料は具体的なケースに応じて総合的に判断されるものです。
画一的に決まるものではなく明確な方程式があるわけではないことに注意して下さい。
Q.8 1回の審理でOKの「少額訴訟」とは?
最近、民事訴訟法が改正されたとかで、「少額訴訟」という制度についてよく聞きます。 何でも短期間で決着がつくということで、争う額も少なくトラブルの多い敷金の返還請求などに向いているということも聞きます。私も現在大家さんと敷金の返還額で争いがあるのですが、具体的な内容について教えて下さい。
A8:「少額訴訟」制度というのは、時間がかかりすぎる現在の日本の裁判制度に、一石を投じた形で平成10年1月1日よりスタートしました。
70年ぶりの民事訴訟法改正の目玉とされ、60万円(平成16年4月1日より30万円から60万円に改正)以下の金銭の争いであれば、相談者のご指摘のように原則として1回の審理で判決が下され、判決は原則として控訴はできません。不服がある場合は異議申し立てができます。
具体的に説明すると、たとえば、入居者が敷金を返してくれない家主に対して敷金返還を求める場合、
1. 原告(この場合は入居者)は、簡易裁判所に備え付けられている「訴状」に必要事項を記入し、賃貸借契約書等関係証拠書類を添付して提出する。
2. 裁判所は審理の項目を決定、被告(この場合は家主)に訴状の副本、期日呼び出し状を通知する。
3. 被告は訴状に対する答弁書を裁判所に提出する。
4. 双方の書類を受理した後、簡易裁判所において原告、被告出席で審理が行われ、その場で判決または和解案が出され結審する。
という仕組みになっています。
この期間はおよそ6週間で、費用としては弁護士等使わなければ、訴状作成による印紙代と郵便料金等で足りるのではないでしょうか。
Q.9 退去時の高額な原状回復費用、払わないといけないの?
大家さんから敷金の精算書が届いたのですが、原状回復費用その他で30数万円の請求を受けました。 あまりに高額なためびっくりするのと同時に憤りを覚えました。支払わなければならないのでしょうか?
A9: 借主が借りていた住宅を退去するときは、住宅を元の状態に戻して大家さんに返す必要があります。このことを原状回復義務といいますが、ここでいう原状回復とは住宅を完全に入居時の状態に戻すということではなく、故意または過失で部屋を汚したり壊したりしたほか、家主に無断で原状を変更したときに負う責任をいいます。ですから、基本的には通常の使用によるふすま、障子、畳、壁紙などの損耗については入居当時の状態より悪くなったとしても、そのまま家主に返せば足りると考えられます。自然に損耗した部分の原状回復費用は家賃の中に含まれていると考えられるからです。しかし、契約書中に取り決めがなされている場合で軽微なものについては、慣習上の問題もあり一部借主に負担してもらうとの考えもあります。
ご質問の方のように、普通の状態で使用しており、故意過失関係なく部屋を汚したり壊したりしていないと思われるのであれば、大家さんに費用の見積書を請求して賃貸借契約の内容と照らし合わせ、支払う義務があるかどうか確認し、納得がいくまで大家さんと話し合いをされたらいかがでしょうか。
今後の問題ですが、
契約時に大家さんに退去するときの原状回復の範囲と負担の方法について確認する。
入居時に家主の立ち会いのうえ住宅の状況を確認する。
退去するときも修繕箇所を家主とともに確認し、過失による損耗と自然損耗の区別をはっきりさせる。
以上のようなことに注意しましょう。